トランスレーショナルリサーチ(TR)とは

トランスレーショナル・リサーチ(TR)=橋渡し研究とは、研究者が薬剤や器具を用いて行ってきた基礎研究成果をもとに、新たな疾患の予防や治療、診断等の開発を目指して、人への臨床応用を研究することを意味します。
従って、人への臨床応用研究を実施することが科学的に妥当であることを、実験動物を用いた非臨床試験も含めた基礎研究段階において適切に確認しておくことが重要となります。
特に遺伝子治療や再生医療といった先端生命科学研究の応用においては、これまでの知見では効果や安全性を予測することが困難な場面があり、臨床応用の妥当性を十分に説明し、臨床応用における被検者の尊重や社会的責任等、これまで以上の倫理的配慮を重要視される場面が予想されます。

TRとはこういった基礎研究段階から臨床応用への円滑な移行を担う新しい分野です。

TR研究者は、基礎研究の成果を臨床の場に応用し、患者で臨床的エンドポイントを評価することができる研究者とされているが、通常は、個人ではなく、基礎及び臨床研究者、生物統計家、リサーチ・ナース、データマネージャなどチームで行われる研究であるとされています。

創薬・創機器開発におけるTRの範疇とは

基礎研究から続く、それぞれの開発段階において、医薬品や医療機器を開発していることを念頭においた研究計画の立案、実施が必要となります。

具体的には、GMPを規範とした品質保証、GLPを規範とした安全性確認を適切に行った上で、臨床試験を開始することが望ましいです。臨床試験においては、可能な限りGCPに準拠し、治験として実施することが目標となります。

TRセンターによる評価の意義と目指すところ

TRを円滑に進めて行くには、基礎研究から非臨床試験、さらに臨床試験へと研究段階が進んで行く際に、GMPやGLP等の基準への適合性を把握しておく必要があります。
把握した内容について、必要に応じて第三者の確認や助言を受けることは、研究の妥当性を担保するだけでなく、外部に対する東京大学の質の高さをアピールする意味でも重要と思われます。
特に臨床試験や治験を開始する前には、品質保証のあり方や安全性の担保について、独自の事前評価を行うことで、いっそうの被験者保護に対する姿勢をアピールすることも出来ると思われます。
東京大学医学部附属病院で実施する臨床試験や治験について、これまで以上に質の高い試験を行っていくことを内外にアピールすることで、東京大学発の基礎研究に付加価値が生まれ、保有する特許権等の利用拡大につながるものと思われます。
東京大学で臨床試験や治験を行うことが、企業にとっても高いメリットと考えられるようになれば、研究費等の増加も見込めると思われます。

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